今回は小生の趣味で、長年作り続けている耳かきの考察です。
耳かきの歴史は平安時代とも鎌倉時代とも言われていますが、現在のような耳かきの形になったのは江戸時代中期以降らしく、当時は耳垢取りを専門とする商売が有ったとのことです。
小生を「耳かき作り」に走らせたのは「いい耳かきが無いね」の母の一言でした。
富山の土産である「鱒の押し寿司」の蓋を押さえている2本の竹で6本作ったところ、これがけっこう好評でした。
その後「いい気になって」沢山作ったのですが、時々「良くない」とのお言葉をいただいた事がありました。調べて見るとその方の耳のサイズに合わないものを差し上げていたのです。それからは、失礼ながらお耳を拝見させて頂いたり、外耳道の解剖的観察などの勉強をしてみました。そこで分かったことが、普段何気なく使っている耳かき、たかが耳かき、されど耳かきだったのです。
今は「佐藤の耳かき」になっていますが、巣鴨地蔵通りの高岩寺境内に「日本一の耳かき」と称して「馬木の耳かき」と言うのを売っていましたが、これは逸品でした。早速1本手に入れてみて掻いてみると何とも心地が良い。そこで「まずは模倣から」と何本か作るうちに、どうにか同じような「心地よい掻き方」ができる耳かきができるようになりました。しかしながらそこでむくむくとわき上がって来た小生の「へそ曲がり根性」。「何でみんな同じ形なんだ?違う形が有ってもいいじゃないか」ということです。
耳かきの最重要部分は「掻き先のかたち」です。この「掻き先考」は後で書きますが、小生の「へそ曲がり根性」の琴線に触れたのが「柄」の部分なのです。竹の耳かきとしては結構高価な「馬木の耳かき」でさえ柄の部分はみな同じ長さと太さなのです。
そこで当時少量ながら持っていた本煤竹で作ることにしました。
普通の耳かきであれば5本は作れるであろう幅広の本煤竹を使用して、柄の部分を大胆に大きく菱形になように刻んでみました。そして柄の部分の表皮を少し削り、模様を施し、究極まで磨き上げると得も言われぬ鼈甲色の風合いとなり、非常に美しい耳かきができあがりました。(自己満足の自慢です)そしてこの作り方は徐々にエスカレートして行き、柄先のくねって曲がったものまでになって行ったのです。
本煤竹は普通の竹に比べ、非常に硬い性質を持っています。従って掻き先を曲げる時に、普通の竹であればすんなりと曲がるのですが、本煤竹の場合、5本に1本は折れてしまいます。しかしその硬さは同時に非常になめらかなものとなりますので、丁寧に磨き上げればガラスにも匹敵するものとなるのです。
こうして出来上がった耳かきは、今ではすでに100本以上となり、最近では小さな小銭入れにも入る携帯用のものも作っています。
耳かきの掻き先考
最近は光ファイバースコープを使ったハイテクな高価で非常に安全な耳かきも有りますが、100均などでも売っているので、皆さん結構安易に使っているようです。
耳の穴は、細い人、太い人、鼓膜まで真っ直ぐな人、曲がっている人など様々な形をしていて百人百様。また、強いかき方が好みの人や柔らかいのが好きな人などなど・・・。だけど売っている耳かきは、その殆どが均一なサイズ。本来ならばいろいろなサイズの耳かきが売っていて然るべきだと思いませんか?歯ブラシなどは硬い毛や柔らかい毛など、様々なものが有りますよね。
まあ「たかが耳かき、価格も安いので幾種類も作っていては商売にならない」ということも分からぬではないのですが・・・。
耳の穴は非常にデリケートなので、時として粗雑な荒いかき先で、外耳道(耳穴の入り口から鼓膜の間)を傷つけてしまうこともあります。このようなことは“強いかき方”を好む人に多く見受けられますが、耳穴が大きいにも拘わらず小さなかき先の耳かきで掻いている人にも見受けられます。重要なのはご自分の耳穴のサイズに合った耳かきを使うことです。
耳穴が大きいのに小さな耳かきを使うと、かき先の圧力が高くなってしまいますので、傷つけやすくなります。何かの加減で一度「傷を付けてしまったので、今は綿棒を使っている」という人を時々見受けられますが、綿棒はお勧め出来ません。耳垢が綿棒の先で奥に押し込まれて、そこで固まってしまうことがあります。そうなるとお医者さんで取って貰わなくてはならなくなります。
かと言って「耳垢」は外耳道を保護する働きも有るらしく、掻きすぎるのもよくないとの事、ご注意を。
日本で使っているような形での耳かきの習慣はアジア圏くらいだけらしく、聞くところによると一生耳垢を取らない民族もあるとのことで、どうやら耳垢の性質によるらしいのですが、耳垢は生きている間は一生出続けるので、一生取らない人の耳の中はどうなっているのやら、見たくもあり、見たくもなしですが、怖い物見たさで小生は一度拝見したいと思っています。
ここで良い耳かきを選ぶ基準をご紹介します。
◇耳穴の細い人=かき先の細い耳かきを使う(かき先の厚い耳かきを使う)
◇耳穴の太い人=かき先の太い耳かきを使う(かき先の厚さはお好みで)
◇耳穴の真っ直ぐな人=かき先の太い耳かきを使う(かき先の厚さはお好みで)
◇耳穴が曲がっている人=かき先の細い耳かきを使う(かき先の厚い耳かきを使う)
◇耳穴の中で回す人=かき先の細い耳かきを使う(特にかき先の厚い耳かきを使う)
◇真っ直ぐに掻き出す人=かき先の太い耳かきを使う(かき先の厚さはお好みで)
◇外耳道が弱い人=掻き先の曲がりの弱い耳かきを使う(かき先の厚い耳かきを使う)
◇外耳道が強い人=掻き先の曲がりの強い耳かきを使う(かき先の厚さはお好みで)
のように大別されますが、それでは何を基準に「細い」とか「太い」と言うのかということになりますが、通常市販されている耳かきの掻き先の幅は3.75mm位ですが、これはかなり「細い」耳かきと言えます。
20年耳かきを作ってきた小生の経験上「心地よい耳かき」のサイズは4.25mm前後でした。当然もっと大きいのを望まれる人もいて、今まで作って差し上げた最大のもは6.25mmというもでした。(普通の人では耳穴に入りません!)
まあ、このような人は別格としても少し「大きめ」の耳かきをご使用になってみると止められなくなります。 |